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「臨床は医師任せ」を卒業。FIHの壁を越える当事者への変化

帝人ファーマ株式会社
(在宅医療企画技術部門 医療機器製品開発部)
医療技術研究グループ

石橋 直也 様

事務局

まず最初に、簡単にご自身のことと、SPL Academyに応募したきっかけを教えてください

石橋

帝人ファーマで在宅医療機器事業の研究グループに所属しています。
私はこれまでレーザーを用いた研究を行ってきましたが、動物実験の段階では一定の効果がを確認できていたものの、それを社会実装するためには人での臨床研究が必要で、まずはファースト・イン・ヒューマン(FIH)を避けて通れない状況でした。一方で、私は研究所の人間で、臨床研究の経験はほとんどなく、「何から始めればいいのか分からない」というのが正直なところでした。
そうした中で、SPL Academyが、ボストンで実際に行ってきたトランスレーショナルリサーチや教育の考え方を基盤にしたプログラムだと知り、研究成果を人に届けるまでのプロセスを、FIH臨床研究まで含めて体系的に学べる点に魅力を感じて応募しました。

事務局

実際にSPLの講義を受講されてみて、特に印象に残っていることはどんな点でしょうか。

石橋

Canvas(事務局注:講義で用いているオンライン教育環境)を通じて、FIHをどのような考え方や段階で進めていけばよいのかが、非常に具体的に示されていました。
特に印象に残っているのは、講義で繰り返し強調されていた
「最初から有効性を示そうとしなくていい」という考え方です。
まずはデバイスが安全に動作するか、操作として問題がないかといった“動作の安全性”“デバイスの安全性”を確認するところから始め、倫理的なハードルを下げた形で一歩ずつ進めていく。その先に有効性評価がある、という段階的な考え方が、とても腑に落ちました。
ハーバード大学で実際に行われているFIHの具体例を交えて説明していただいたことで、「理論」ではなく「現実としてどう進められているのか」をイメージできた点も大きかったです。

事務局

臨床ニーズ検証やチームでのワークを通じて、印象に残っていることはありますか。

石橋

企業の人間として、自分の立場の限界を強く意識するようになりました。
私たちはどうしても、インタビューや限られた場面を切り取った情報から現場を理解しようとしますが、臨床医の先生方は日々、目の前の患者さんの困りごとを実感として持っておられます。
波多先生が、「企業側は現場を想像することはできても、体感することはできない。そのギャップを放置してはいけない」とお話しされていたのが、とても印象に残っています。
そのギャップにどう向き合い、どう埋めていくかを丁寧に教えていただく中で、「これは企業だけで完結させてはいけない」「臨床医の先生と一緒に取り組まなければ、本当に意味のあるものにはならない」と、強く感じるようになりました。

事務局

講師の方々とのやり取りの中で、特に印象に残っていることはありますか。

石橋

(メンター制度では)波多先生が「個人指導塾の家庭教師のような関わり方」と表現されていましたが、実際に受講してみて、その意味がとてもよく分かりました。
講師の先生方がしっかり時間を取って、一人ひとりの状況に応じて丁寧にコメントやフィードバックをくださり、単に講義を受けるというよりも、近い距離で伴走してもらっている感覚でした。
そうしたやり取りを重ねる中で、先ほど述べたように「これは企業だけで完結させてはいけない」「臨床医の先生と一緒に取り組まなければ、本当に意味のあるものにはならない」と、自然に感じるようになりました。

事務局

多様なバックグラウンドの受講者や講師と取り組む経験はいかがでしたか。

石橋

非常に貴重な経験でした。
正直に言うと、企業側の人間として、臨床医の先生方に対して無意識のうちに心理的なハードルを感じていた部分がありました。
ただ、毎週のように議論を重ねる中で、先生方も同じように悩み、試行錯誤されていることが分かりました。海外でも「医師も研究者も、みんな同じように悩みながら進めている」と話されていた言葉で気持ちが楽になり、次第に「特別な存在」ではなく「同じプロジェクトを進める仲間」だと感じられるようになりました。

事務局

中間発表会を振り返って、どのように感じられましたか。

石橋

振り返ってみると、多くの学びが得られた発表だったと思います。
特に、「この課題を放置すると何が起きるのか」「なぜ今解決しなければならないのか」という点について、まだ十分に伝えきれていなかった、というフィードバックをいただきました。
先生方が講義の中でおっしゃっていた「技術やアイデアの良さだけではなく、なぜ“今”それをやるのかを語れなければ、人には届かない」という言葉を、身をもって理解する機会になりました。

事務局

このプログラムを通じて、ご自身の中で最も大きな変化は何だったと思いますか。

石橋

「臨床を自分ごととして考える」ようになったことです。
以前は、「自分はエンジニアだから臨床は医師に任せればいい」と、どこかで線を引いていました。
しかし、波多先生が繰り返し示されていた「その姿勢こそが、トランスレーションを止めてしまう」
という言葉に強く考えさせられました。医師ではなくても、臨床研究のデザインを一緒に考えることはできるし、考えなければいけない。そのスタンスを、今後も大切にしていきたいと思っています。

事務局

最後に、SPL Academyへの参加を迷っている方へメッセージをお願いします。

石橋

企業にいると、どうしても同じ属性の人としか議論しなくなります。
SPL Academyでは、自分の研究に、これまでになかった視点が次々と入ってくる。そういう意味で、とても刺激的で、視野を大きく広げてくれるプログラムだと思います。

 

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